カンフーハッスル

 って事で、『少林サッカー』で著名なチャウ・シンチー監督の『カンフーハッスル』を観てきました。吹替版ではありません。公開から一週間以上経過したためなのか、朝一の上映だったからなのか、お客は20人程。自分の定番席(前から3列目)より前、及び同列には誰もいませんでした。
 ネタバレは後半に置いておくとしまして、まず言える事は『少林サッカー』気分で家族連れが観る映画ではありません。初っ端から残虐シーンの連続、しかもギャグにしていたり・・・お子様の情操教育上好ましくはありません。まあ、モロに見せる事はありませんが・・・残虐シーン(映画のですよ)には慣れた自分も、唯一許せないシーンはありました。
 猫を殺すな!
 人間が首チョンパになろうが、斧に滅多斬りにされようが構いませんが、猫を影とは言え真っ二つにするのは許せません。
 以下、多少ネタバレ。
 物語は、豚小屋砦と呼ばれる住宅街を舞台(戦場)に、街の住人(実はクンフーの達人)と斧頭会というギャングの抗争を描く物語。
 で、視聴後に思ったことは、
 主人公の影が薄い。その割においしい所だけ奪うずるいキャラ設定。しかも、突然強くなりすぎ。通例なら助けてもらった中年夫婦に猛特訓されて強くなるってな展開なんだろうけど、敵から受けた一撃で覚醒って・・・死にかけると強くなるサイヤ人以上だなあ、と。そもそも主人公が小悪党から善人になる過程の描かれ方が弱過ぎる。結局、ラス直前まで小悪党だから全く感情移入できませんでした。
 それとヒロイン――まあ、この作品のヒロインはアイスの売り子・ファンではなく、おばちゃんって事になるんだろうけど――の影の薄さ。喋れないという障害があるがために更に影は薄い。なんか哀れでした。
 と、文句ばかり記していますが、面白くないのかと問われれば、そんな事はありません。そもそも、主人公とヒロインが必要無いと思えるほど、周りの人物達が非常に個性的で魅力的。元々のカンフースター達を集めたという事もあって格闘シーンは言わずもがな、「ありえねー」ってシーンもほんとにありえねーでした。
 ちなみにこの作品、武侠映画でもあります。カッコよくて(物理的に)強いおばちゃんキャラが登場するのは武侠ものくらいしか見かけませんからねえという自分勝手な判断で。しかも、中年家主夫婦が楊過と小龍女だったりして度肝を抜く仕様となっています。
 以上、ネタバレ終了。
 感動できるし、笑えるし、私的には好きな部類に入る映画となりました。
 まあ、頭を空っぽにして観ないと疑問点が溢れんばかりになりそうで、考えるな、感じるんだってな映画でした。