『ご臨終メディア―質問しないマスコミと一人で考えない日本人』読了

森達也森巣博 集英社集英社新書) 222ページ 680円+税
 マスコミの怠慢、メディアに踊らされる日本人の善意の暴走、それらに苦言を呈する対談集。マスコミ嫌いは諸手を挙げて賛美し、マスコミ信奉者は思考停止に、某都知事信者にとっては唾棄すべし書籍となっておりました。ちと内容が過激に過ぎるため、己の考えている事が絶対に正しい、気に入らない意見を許容できないタイプの人間には読破も辛いやもしれません。私的には、強者に迎合して弱者に強いマスコミ、言論統制なんてしなくてもその前に意図を読んで従順となるマスコミ等のマスコミ批判に関しては頷ける箇所があったのですが、一部犯罪加害者を過重に擁護している点だけは合点できませんでした。もちろん、容疑者の段階で名前と顔を出すマスコミの軽率さは問題とは思いますが、基本的に無期懲役と死刑の間の刑罰が存在しない以上死刑制度に関しては安易に廃止とは言えない面もあるとは思います。加害者の視点には立つけど、被害者の視点には立っていない意見は、ちと問題かと・・・。それと自分達にとって都合の悪い意見に関しては「思考停止」の一言で片付けてしまっている感も否めませんでした。
 この書籍は、様々な考え方を知る上では良書であると思うのですが、テレビ、新聞をおおっぴらに批判しているので、大々的に取り上げられる事は無いんでしょうなあ。そしてテレビや新聞で取り上げられていないと購入しませんからねえ、人は。
 2005年10月19日第1刷発行 ISBN:408720314X