『失われし一族』(上・下)読了

マーセデス・ラッキー 【訳】山口緑 東京創元社創元推理文庫) 382+388ページ 各940円+税
 《ヴァルデマールの風》第二部。王女エルスペスが谷で魔術修行を行い、その過程で〈暗き風〉と親しくなっていく様が描かれておりました。そして、前巻で倒したはずの〈隼殺し〉が生きていたという話。
 ってか、猫耳獣娘ナイアラ(文章内容等から『ブラッディロア』の半猫状態ウリコ、又は『アップルシード』のアルテミスを想起していたので、末弥純さん描く表紙のナイアラは違うような気が・・・と思ってみたり)と、ちょっと傲慢な白髪の天才美男子〈炎の歌〉が、主役級を食う勢いで大活躍でした。まあ、元々主人公であるヒロインエルスペス自体が地味で・・・。
 それとエルスペスが〈炎の歌〉に心奪われているのを見た〈暗き風〉が嫉妬の焔に身を焦がしていたら、実は〈炎の歌〉は〈暗き風〉の事が・・・逆にエルスペスが嫉妬に・・・という展開は予想できませんでした。
 [ネタバレ]〈隼殺し〉が超絶パワーの持ち主故に倒し方は暗殺。しかも主人公達が注意をそらさせている間に、背後に廻ったナイアラが・・・と、〈隼殺し〉自体が何故、誰がすら分からない方法で殺されるという、このタイプのファンタジー小説では信じられない程盛り上がりを欠いたものになっておりました。まあ、それがこの作品”らしくて”むしろ良いのですがね。
上:2006年1月31日初版 ISBN:4488577083
下:2006年1月31日初版 ISBN:4488577091