『香乱記 全4巻』読了

宮城谷昌光 新潮社(新潮文庫) 261+317+247+308ページ 1・3巻476円+税、2・4巻514円+税
 秦末、自らの信念に生きた斉の田横の生涯。作品を重ねる毎に顕著となる著者の主人公清廉潔白完全無比人物(差異無し)化は、さすがにもう食傷気味。そんな訳で田横の元に集まる人材が清濁併せ持たない人物ばかりで面白みが全く無いのは致命的でありました。むしろ田横陣営を省いた陳勝呉広の乱から楚漢戦争の話が面白かっただけに残念。
 まあ、自分がこの混乱期の人物達に肯定的と言いましょうか、全否定する事はないだろうと思っているからなんでしょうけど、4巻に入ってから続出する著者なりの解釈は気に入った人物=好人物、気に入らない人物=悪人という単純善悪二元論に思えてしまって仕方ありませんでした。歴史小説の楽しみの一つとして、作家毎の様々な史観を俯瞰的に読める事が言えるのですが、今回の作品は・・・。
 それと不自然な程、女っけがありすぎたのも素直に楽しめなかった要因かな・・・蘭はさすがにいらん。
 この書籍は2004年1月から3月に3巻本として刊行されたものを4巻本として再編集文庫化です。
〈一〉:平成18年4月1日発行 ISBN:4101444315
〈二〉:平成18年4月1日発行 ISBN:4101444323
〈三〉:平成18年5月1日発行 ISBN:4101444331
〈四〉:平成18年5月1日発行 ISBN:410144434X