『古事記の起源 新しい古代像をもとめて』読了

工藤隆 中央公論新社中公新書) 293ページ 840円+税
 停滞する古事記研究に海外(主に中国、東南アジア)の少数民族の事例等を引き合いに一石を投じるべく記された書。排泄物までも神を生み出す日本神話を家畜としての豚がいなかったが為と断じたり、歌垣に比重が傾きすぎていたりと著者独自の考えが奇抜・・・とまでは言わないまでも興味深かったです。
 目次は「古事記研究の現在」「古事記はどのように研究されてきたか」「原型生存型民族の口誦表現モデルで読む」「臣安万侶言す(「記序」)―激変の時代が突出させた復古精神」「天地初めて発けし時―無文字の古層と文字の新層の交錯」「イザナミの死―排泄物利用の技術革新」「黄泉の国神話―死と折り合いをつける」「スサノオ神話―分析を拒絶する混沌」「ヤマトタケルの死―古層の死生観で読み直す」「サホヒコ・サホヒメ―民族サバイバルから恋愛へ」「志毘臣と袁(示+おおざと)命の歌垣―歌垣と政治の交錯」「古事記と日本」となっています。
 2006年12月20日発行 ISBN:4121018788