『剣闘士スパルタクス』読了

佐藤賢一 中央公論新社(中公文庫) 437ページ 743円+税
 古代ローマ、奴隷の叛乱としては最大規模となる「スパルタクスの乱」の首謀者・剣闘士スパルタクスを描いた書。著者の古代ローマ作品ものとしては第二弾・・・解説ではスパルタクスに関して「人間的な弱さや卑俗さに積極的に光をあて〜」と記しているが、著者の記す主人公は総じて戦闘に関しては天才的ながら、精神的な弱さなどの悩みを内包しているのが常ですからねえ。カエサル(そのライバルも)にしろ、デュ・ゲグランにしろ・・・宮城谷昌光さんの描く主人公が清廉で俗物臭の殆どしない似たような人物像になってしまっているのと、何か通じるものを感じてしまうんですよねえ。
 剣闘士として死と隣り合わせながらも栄光に包まれた境遇から脱走はしてみたものの、誇りも持たず他人任せでほぼ役に立たない奴隷達が合流(剣闘士は百人程度、有象無象は7万人)してからは、頼れる仲間の死、様々な苦難の連続で、読んでいるこちらも、やはり民衆(未満)は愚かだなあ、とスパルタクスに同情せざるを得ませんでした。エピローグでの、カエサルと(多分)スパルタクスとのやり取りが、良かった。
 ちなみに映画版とは異なるので、参考にするのであれば塩野七生さんの《ローマ人の物語》を・・・10ページ程で簡潔に纏められております。
 この書籍は2004年5月に刊行されたものの文庫化です。
 2007年5月25日初版発行 ISBN:9784122048522