山室建徳 中央公論新社(中公新書) 356ページ 940円+税
日清戦争から第二次大戦までの間に生まれた軍神、そう呼ばれる軍人達の生涯と、いかに軍神に至ったかを記した書。軍国主義故、軍人主導かと思いきや、特定の人間を軍神化する事には消極的、むしろ民衆の総意であったりと様々な例が挙げられております。ただ、陸軍と海軍とで軍神を生み出すのは競い合ったりもしてますがね。
そう言えば、作中、昭和初期の将校の「小隊長がこのやうな死を遂げるべく命令したといふ風に見る向きがありはせぬか。外国の隊長ならば左様なことをするかも知れませぬが、日本の隊長は左様な無惨な命令は下しませぬ。もし左様な必要があれば、隊長自ら陣頭に立ってせう」という挿話は、著者の弁ではないが、この後の特攻隊の軍神達へと続き皮肉過ぎる。
目次は、「軍神の誕生―廣瀬武夫と橘周太」「明治の軍神―乃木希典」「軍神にならなかった軍神―爆弾三勇士」「昭和の軍神たち」となっています。
乃木の項では、何故明治天皇に殉死したのか、様々な(当時の)説を紹介しております・・・つうか、乃木の殉死を知った新聞社の反応(明治天皇崩御と被るので、もっと記事の無い日に死んでくれれば良かったのに等)と、実際の記事(誠忠無二の軍神等、賛美)とのギャップは何時の時代も変わらないのだなあ、と感心しました。
2007年7月25日発行 ISBN:9784121019042