『大帝没後 大正という時代を考える』読了

長山靖生 新潮社(新潮新書) 205ページ 680円+税
 大帝=明治天皇崩御後の大正時代を大衆、及び文学の視点から描いた書。明治後の大正が、どこか昭和後の平成を想起させる内容となっておりました。中でも、徳富蘇峰が大正の若者を「模範青年」「成功青年」「煩悶青年」「耽溺青年」「無色青年」と分類しておりましたが、見事に「安定志向」「勝ち組」「ひきこもり」「おたく」「フリーター」と対比しているのは面白い。まあ、世相を無視した分類は、害以外の何物でもありませんがね。
 乃木希典の殉死に対しての明治文豪、大正(若い)文豪の感じ方の違い等読んでいると、色んな意味で大正の文豪は現代若者に通じるのかもしれないと錯覚してしまいそうでした。つうか、乃木大将の件に結構ページを割いていて、丁度この間読了した『軍神』と被るものがありました。
 目次は「歴史の流れが変わる時」「天皇の逝く国の「その日」」「大将自刃」「殉死小説と世代の断絶」「顕在化する消費エリート」「大衆文化とデモクラシー」「大正教養主義の自負と揺らぎ」「『彼岸過迄』的「青年」の謎」「「家殺し」国家の祝祭」となっています。
 2007年7月20日発行 ISBN:9784106102219