『貧しき人々』読了

ドストエフスキー 【訳】木村浩 新潮社(新潮文庫) 224ページ 320円
 再読。
 初めて読んだドストエフスキー作品にして、この作品を読んだばかりにトルストイではなく、ドストエフスキーに傾倒していったので感慨深い作品となります。
 善良な小役人の中年と薄幸の乙女を往復書簡という体裁で記された純愛物語で、当時は素直な目で見られたのに――世間にもまれた訳でもないが――今読んでみると、全く別の面が見え隠れしてしまいます。中年男・マカールは、(「白痴」読後だからやもしれませんが・・・)金銭の有無で性格がコロッと変わる善良さを誇るだけの人間としか見えず、求婚された終盤のワーレンカに至っては、マカールの頚木から解放されたかのごとく、マカールを些事に扱き使う悲劇のヒロイン気取りの女性・・・まさに中年男をいいように扱って捨てた悪女と、下心丸出しの親父の恋愛ごっこでしかありませんでした。
 当時のロシアの紙の価値を知りたくなりました。
 昭和44年6月20日発行 平成2年3月5日41刷 ISBN:4102010068