『証言の心理学―記憶を信じる、記憶を疑う』読了

高木光太郎 中央公論新社中公新書) 202ページ 740円+税
 人間の記憶と言うものが、不確かで如何に脆弱に変遷し易いものであるかを複数の犯罪証言を心理学者の立場から紹介した書。基本的には心理学研究の書という事になるらしいのですがね。何故、事件発覚後に時間を経て目撃情報が増えたりするのかを、子供の被暗示性や事後情報などを絡めて詳細に記しています。また、自らが加害者の精神に迫る(って程でもないが)件もあります。
 いやあ、怖いですなあ。たまたまテレビを観ていた時に犯罪者に襲われた女性が、その時テレビに映っていた人を犯人と思い込んでしまうなど、人間の記憶があまりに曖昧模糊としている怖さ。絶対の自信を持っている記憶程、むしろ怪しいものはなかったり。
 目次は、「記憶の脆さ」「ネットワークする記憶」「正解のない世界」「ギリギリの挑戦―目撃証言への実験心理学アプローチ」「内側からの眺め―浜田寿美男の「供述分析」アプローチ」「コミュニケーションの亀裂―スキーマ・アプローチ」となっています。
 2006年5月25日発行 ISBN:4121018478