『漱石ホラー傑作選』読了

夏目漱石 【編】長尾剛 PHP研究所PHP文庫) 253ページ 476円+税
 明治の文豪・夏目漱石は、怪談やホラー・オカルトにも興味を持ち、その類の作品も著していた・・・と、その膨大な著作の中からホラー色の傾向が強い作品を、ショート作品はままで、長編は抜粋した形でまとめた書。『三四郎』や『吾輩は猫である』といった代表的な作品から、あまり知られていない(単に自分が知らないだけですが)作品まで多々。
 の、はずでしたが、タイトルに”ホラー”とあって、過度の期待をしてしまったからなのか、拍子抜けする程、ホラーではありませんでした。むしろ、怪奇奇譚・・・とも言えず、ちと幻想入ってる?程度な作品でした。唯一、「夢十夜」は、ホラーと呼べなくもありませんでしたがね。
 って事で、ホラー作品として読むと微妙ではありますが、作品としては「趣味の遺伝」などは非常に良かった。
 「人間もその日その日で色々になる。悪人になった翌日は善男に変じ・・・略・・・「あの男の性格は」などと手にとったように吹聴する先生があるが、あれは「利口の馬鹿」というもので、その日その日の自己を研究する能力さえないから、こんな傍若無人の囈語を吐いて独りで恐悦がるのである。」
 2009年6月17日第1版第1刷 ISBN:9784569672717