『イヌイット「極北の狩猟民」のいま』読了

岸上伸啓 中央公論新社中公新書) 210ページ 740円+税
 現代の(カナダ)イヌイット社会を様々な観点から記した書。(読んではいないのですが)1960年代のイヌイットの生活のルポ『カナダ・エスキモー』(本多勝一)のその後の変遷を描くかのような書籍になっているようです。1960年頃(1980年頃も)の狩猟民としての姿が、現在では狩猟民として生活している人自体が皆無に近いそうで冷暖房完備の家に住み、毛皮ではなくダッフルコートを着込み、インターネットを駆使する姿と言うのは、(蔑視した発言になってしまいますが)驚きでした。
 それと数十年前に持ち込まれた酒、麻薬によって自堕落となる若者(とは言っても、人口の60%が20歳以下)、先進国の環境汚染が海流など廻り回って与えた食生活への悪影響(狩猟にも影響)や、動物保護団体のためにアザラシの毛皮収入を閉ざされたり、キリスト教の対立(国教会とカトリック)が持ち込まれたりと、先進国との接触による負の面も多く描かれておりました。
 時間にルーズなのは、やはり狩猟民族だからなんですなあ。
 2005年11月25日発行 ISBN:4121018222