『一神教の闇―アニミズムの復権』読了

安田喜憲 筑摩書房ちくま新書) 238ページ 720円+税
 一神教多神教を比較する書、と思いきや、アニミムズ原理主義どころか、アニミムズ”教”へと誘う書でした。言っている事は間違っていないように思わせて、そもそも自論にとって都合の悪い事は記さず、良い事だけを取り上げているのは非常に気になりました。その為、この本だけ読むと日本最高! 慈悲に溢れてます! 昔から争いなんてないよ、日本人だもん! 中国見習え、ってな気分になってきます。もちろん、こんな短絡的な事を記した内容ではないのですが、せめて否定的な面も多少は描かれていれば本当っぽく読めたのに・・・何気に勿体無い。それ以前に一神教に関して感情的に批判するだけで、アニミズム程まともに取り上げていなかったのも残念。
 たまたま先月読んだ”原理主義”関連の新書中で語られていた一神教多神教を語る際の誤った思考法まんまな内容*1だった事も穿った読み方をしてしまった遠因でしょうなあ。まあ、テロ・暴力=原理主義と捕らえている概念がそもそもおかしいとも言えますが・・・。
 目次は「畑作牧畜文明から稲作漁撈文明へ」「アニミズムルネッサンスと女性原理の復権」「水利共同体が創った紛争回避メカニズム」「文明史から見た日本とインド」「環太平洋のアニミズム連合」「江戸時代が築いた環境調和型文化」「ハイテク・アニミズム国家の構築」となっています。
 2006年11月10日第1刷発行 ISBN:4480063315

*1:多神教には、寛容、自然との共生といったイメージが割り当てられることになる。端的にいうなら、多神教一神教に対する優位性を語るために、一神教多神教の比較がなされているのである。」(抜粋:『原理主義から世界の動きが見える