『現代殺人論』読了

作田明 PHP研究所PHP新書) 233ページ 720円+税
 自分は購入した順(数冊の誤差はあるものの)に書籍は読むようにしているんだけど、本日は非常にタイムリーな気がしました。
 殺人事件に関して犯罪精神医学の立場から記した書。昭和20年代〜30年代の終戦直後は置いといて、それ以降は別段犯罪が増えても、凶悪化してもいない事実を、マスコミ等の感情論や勝手な推測ではなく、データから懇切丁寧に解説しております。もちろん、貧困に起因した犯罪から、中流以上の家庭での犯罪が多くはなっているようではあるのですが・・・。視聴率が取れるからと不安感を煽るマスコミ、予算を多く分捕るためにマスコミによる扇情を喜ぶ法務省や警察、という図式は、なかなか興味深かった。殺人事件の犯罪例を多めに収録しているため、多少読んでいて辛くなる箇所も多かったりします。
 私的にも、最近の犯罪が凶悪化しているように感じるのは、マスコミの過剰反応、市民の過敏反応、情報伝達の向上が挙げられると思っており、以前は身の回りの事件程度だったのが、最近はニュースやネットの広範化でより知る事が可能になっただけであると。むしろテレビなどで昔はこんな犯罪無かったのに、と訳知り顔で語るコメンテーターや芸能人を見ていると、無かったのではなく、知らなかった(知らされていなかった)、興味を持たなかっただけだろうと思うばかりなんですよねえ。
 目次は、「なぜ人は人を殺すのか」「昔の犯罪、今の犯罪」「犯罪における殺人者の位置づけ」「殺人の分類と事件簿」「殺人の起源」「パーソナリティ障害と殺人」「殺人者の責任―「殺人者精神病」をめぐって」となっています。
 2005年12月2日第1版第1刷 ISBN:4569645313