『映画館と観客の文化史』読了

加藤幹郎 中央公論新社中公新書) 302ページ 860円+税
 「映画館」と「観客」を主題に110年間の映画の歴史を振り返る書。作品を語るのではなく、アメリカ、及び日本の映画システムの変遷を描いておりました。中でも興味深いのは、観客が静粛性を求めるようになったのが、ここ数十年という短い期間であった事。最近の映画の観方しか知らない人には、映画を騒ぎながら観るという事は土台理解し難いんだろうなあ、と。ファンタ祭などの映画祭では、それなりに静粛でもないため違和感は感じないんだけど・・・何年か前のファンタ祭でインド映画を鑑賞した際、観賞していたインドの方々が祖国での鑑賞法をやって浮いていたのを思い出しました。
 目次は、「理論的予備考察」、第一部アメリカ編「映画を見ることの多様性」「1905年から30年代までの映画館」「オルターナティヴ映画館」「テーマパークの映画館」「観客の再定義」、第二部日本編「日本映画の問題の傾向と対策」「映画都市の誕生―戦後京都の場合」「多種多様な観客」となっています。
 2006年7月25日発行 ISBN:4121018540