『報道被害』読了

梓澤和幸 岩波書店岩波新書) 224ページ 740円+税
 犯罪の加害者ではなく、被害者(遺族)に対して行われるメディアによる過剰報道に警鐘を鳴らす書。冒頭では松本サリン事件等の冤罪例を扱っておりますが、基本は報道被害にあった場合の実態、救済処置、今後如何にすべきかを記しています。被害者(遺族)に対して行われる執拗なまでの包囲網・・・斎場では家族の同意を得たと嘘をついてまで遺影を撮ろうとするカメラマン。深夜遅くまでドア越しでの質問攻め・・・被害者家族がニュースなどでインタビューに応じているけど、そんな状況に嫌になって発言してしまうんですなあ。そりゃあ、苦笑もしたくなりますわな。
 ただし、一方的にマスコミ批判を記している訳ではなく、独自に事件を立証して冤罪を晴らす記者、被害者を思いやる記者、事件・事故の遺族に対して「お気持ちは?」などの無神経な質問はしないよう指示されている青森放送等にも言及しております・・・ってか、遺族から悲しみのコメントを取る事が至上命令になっている事の方に驚きます。まあ、それでも誤報は認めず、その場合は新たな発見があったで誤魔化したりと、どうにもならんようなマスコミの例ばかり挙げられておりますがね。
 そして、一番の問題である警察という組織にも切り込んでおります・・・そう言えば、丁度本日も、警察による誤認逮捕の再審がありましたなあ。
 目次は、「報道被害と向き合う」「松本サリン事件報道・再考」「犯罪被害者への取材と報道」「報道被害とたたかう」「報道不信とメディア規制」「市民のための報道へ」となっています。
 2007年1月19日第1刷発行 ISBN:9784004310600