『天龍八部』(全8巻)読了

 金庸 【監修】岡崎由美、【訳】土屋文子 徳間書店(徳間文庫) 389+369+371+345+400+356+391+422ページ 各686円+税
 北宋時代を背景にした宋周辺国の人物達をも巻き込んだ確執や運命に翻弄される様を描いた武侠小説・・・ってか、これで金庸作品の長編はおしまいなのが寂しい限りですな。願わくは、修整版が翻訳されることを願うばかりです。
 《以降、ネタバレ》
 と言うことで、今作では、水滸伝ばりに4人の人物の人生を絡ませながら、物語は進行するのですが・・・蕭峯以外の主人公は、その器にあらずってな状態で、彼以外の話は非常に読んでいて辛い。
 中でも、最初の主人公・大理国王子の段誉・・・厳格かと思えば、親の血は抗えず好色というのでもないのだろうけれど、ストーカーまがいの行為を平然と行って、武術の腕もたまたま運よく手に入れる始末・・・まあ、基本な設定なんですが、虚竹も鉄頭(素養はあった?)もそんな感じでしたしね。主人公が代わる事に気付かなかったら、途中で読むのを止めるところでした。
 って事で、次の蕭峯が、文句なく正統派武侠小説を読んでいるようで、不幸で救われないながらも楽しめたので救われました。
 次の虚竹は、まだ段誉よりはまし、程度ではあったものの、ロリ婆という概念を持つキャラを登場させていた点だけは評価。さすがは50年前からツンデレヤンデレを生み出した大家だけの事はあります。
 そして、最後の慕容復は、まあ盛り上げ役でしかなく、序盤から名前だけは登場するので、大層凄いのが登場するんだろうと期待していただけに、がっかりでした。
 それにしても、鉄頭は中心人物に数えても良い位には、濃いし悲劇的な人生を送っているのに、入れてもらえないのが不幸・・・悪役に落ちてしまったから、仕方ないのかもしれませんがね。
 この書籍は2002年3月〜2002年10月に徳間書店より刊行されたものの文庫化です(原作は1967年)。
(一)「剣仙伝説」:2010年1月15日初刷 ISBN:9784198930943
(二)「王子受難」:2010年2月15日初刷 ISBN:9784198931117
(三)「運命の激流」:2010年3月15日初刷 ISBN:9784198931254
(四)「行路茫々」:2010年4月15日初刷 ISBN:9784198931414
(五)「草原の王国」:2010年5月15日初刷 ISBN:9784198931568
(六)「天山奇遇」:2010年6月15日初刷 ISBN:9784198931674
(七)「激闘少林寺」:2010年7月15日初刷 ISBN:9784198931872
(八)「雁門悲歌」:2010年8月15日初刷 ISBN:9784198932060