『鹿鼎記』(全8巻)読了

 金庸 【訳】岡崎由美、小島瑞紀 徳間書店(徳間文庫) 417+435+429+412+440+439+455+519ページ 各800円+税
 清朝康熙帝時代を舞台にした、金庸最後の武侠小説(この後、断筆)。ストイックで真面目な今までの主人公とは掛け離れたお調子者で怠け者、更に女好きで賭博好きな少年を主人公とした作品。主人公がどうにも好きになれず――全8巻ってのもあってか――読書が苦痛に感じました。歴史を絡ませる話や策謀などのシーンは面白いので、そこを主にしてくれれば良かったのですが、くだらない女性関連ばかりを主眼にして、辟易としました。まあ、金庸作品としては、目新しく感じはしましたがね。
 《以降、ネタバレ》
 この作品、何が凄いって主人公がほとんど成長しないだけでなく、軽佻浮薄な口舌の徒にして、コネのある人間が一番成功するって事を訓示する内容になっています。もちろんコネを作るまでは、苦労・・・も、せずに運だけで、たまたま少年時の康熙帝と知り合ったからだけ、で、対応の上手さもあったのだけれど、成功していくシンデレラストーリー?
 その主人公が、”少年”の名を免罪符にやりたい放題し放題。後半になると色欲も格段に強くなって、ラストは幸せな展開になったみたいですが、身動きできなくした女性を8人強姦(一部未遂)してものにしたりしています。最初読んだ時は、少年だから性行為には及ばず、と思っていたら、しっかり三人の女性が妊娠していたのには驚きでした。
 年を取ったのか、最近は主人公に感情移入する読み方ばかりしていたのか、主人公に嫌悪感をもつばかりでなんとも。英雄好漢とは正反対とまでは言わないけれど、書評やあとがきを読むと、”義だけは重んじる”という事で一環しているとありましたが、いやいや、と否定せざるを得ませんでした。
 後半の超展開は呆れはしますが見所でした。
 この書籍は2003年8月〜2004年8月に徳間書店より刊行されたものの文庫化です(原作は1969年)。
(一)「少年康熙帝」:2008年12月15日初刷 ISBN:9784198928926
(二)「天地会の風雲児」:2009年1月15日初刷 ISBN:9784198929091
(三)「五台山の邂逅」:2009年2月15日初刷 ISBN:9784198929251
(四)「二人の皇太后」:2009年3月15日初刷 ISBN:9784198929411
(五)「経典争奪」:2009年4月15日初刷 ISBN:9784198929572
(六)「クレムリンの女帝」:2009年5月15日初刷 ISBN:9784198929732
(七)「故郷再び」:2009年6月15日初刷 ISBN:9784198929862
(八)「栄光の彼方」:2009年7月15日初刷 ISBN:9784198930073