『「カラマーゾフの兄弟」続編を空想する』読了

亀山郁夫 光文社(光文社新書) 277ページ 780円+税
 新訳版『カラマーゾフの兄弟』の訳者である著者が、ドストエフスキーの創作ノートや遺された人々の言説、当時の状況から推測して、著者死去によって未完どころか記される事もなく消えた続編を妄想空想した著。
 当時から有力(?)なアリョーシャが皇帝暗殺を謀る説を真っ向から否定するではなく、ありえそうな展開(妥当な展開?)になっているのは、著者のドストエフスキー研究の成果と言えましょうか、あまり違和感を感じませんでした。
 目次は、「作者の死、残された小説」「皇帝を殺すのは誰か」「託される自伝層」「「第二の小説」における性と信仰」となっています。
 ちなみに『カラマーゾフ』を読んだのは、10年以上前の原卓也訳版なので、映画で観たりもしている『罪と罰』や、『虐げられた人々』と比すと内容はほとんど覚えていなかったりしますがね。しかし、リーザの「恥知らず、恥知らず・・・」が、亀山訳版では「いやらしい、いやらしい、いやらしい・・・」になっているのか、とどうでもいい事に反応した。
 2007年9月20日初版1刷発行 ISBN:9784334034207