『書と日本人』読了

石川九楊 新潮社(新潮文庫) 266ページ 438円+税
 古代から現代までに連なる日本の”書”の歴史を図版を大量に挿入しつつ紹介する書。
 懐古主義とまでは言わないものの、近代化する現代の日本の風潮に苦言を呈する箇所はともかく、書の羅列となる前半から中盤の学級崩壊は寺子屋時代からある等の書と関係のない社会批判などの部分しか記憶に残りませんなあ。
 って事で、パソコン(作中ではワープロですが)に対する不安は納得できないことはないものの、縦書きという構造を崩して、横書き社会になると「(日本では)自省と自制を欠いただらしのない社会となることは目に見えています」とまで断言されると――本ブログは元々だけど――Web関連は完全否定ですな。まあ、ここだけ抜き出してしまうと過激発言に思えてしまいますが、前後の文脈から計れば、日本語を憂慮しているだけである事が分かります。
 目次は、「写経の効力」「女手=平仮名の発明」「禅と墨蹟、漢語の厚み」「解放される文字」「寺子屋の手習い」「遊女と書」「日本のなかの中国趣味」「書の巨人たち」「近代化がもたらしたもの」となっています。
 この書籍は平成16年2月に毎日新聞社より刊行された『「書」で解く日本文化』を改題したものです。
 平成19年5月1日発行 ISBN:9784101483146