『ラヴクラフト全集 別巻』(上・下)読了

 H・P・ラヴクラフト 【訳】大瀧啓裕 東京創元社創元推理文庫) 366+396ページ 上:740円+税、下:840円+税
 ラヴクラフトが、添削・補作・共作した短編23編を収録した書。当時の出版事情を弁えていないのでなんですが、作家によっては、ラヴクラフトがほぼ全てを改稿している作品もチラホラあるそうで、中でもヒールドは凄い。「古代のミイラの脳が生きている」というアイディアだけ出して、それをラヴクラフトが作品として完成させておきながら、著者名はヒールド。こんなパターンは(今で言うゴーストライターってやつか)多かったのか?
 ただし、ラヴクラフトが自由に書いている作品程、本人が書いた場合はあまり入れない(体系化されていなかった?)クトゥルー関連の小物をばしばし出してくるので、むしろありがたいと言えなくもありませんでしたが。始めは、「ナコト写本」とかの小物を挿入するのは、個々の著者がラヴクラフトの借り物を入れたがるが故かと思っていましたよ。
 作品としては、どれも微妙な面白さ・・・今読むからかもしれませんが、どこかで読んだ(聞いた)ような話ばかりになってしまっており、根源的な恐怖を感じられる作品は残念ながらありませんでした。
 面白かったのは、添削依頼先としてラヴクラフトを紹介されたビショップの解説「(ビショップは)ロマンス小説を書きたかったそうなので、依頼先を間違えたといわざるをえない」かな・・・大間違いですな。
上:2007年9月28日初版 ISBN:9784488523084
下:2007年12月28日初版 ISBN:9784488523091