『エスペラント―異端の言語』読了

田中克彦 岩波書店岩波新書) 220ページ 740円+税
 エスペラント語の知識もなく、本著自体も言語に対する書籍ではなく、それを取り巻く状況や入門書的な扱いである事から、この書籍に対しての率直な感想である旨、ご了承ください。それと一部、自分の頭が働いていない部分もあります・・・と予防線を張っておく。
 って事で、この著書を読了して最初に感じたのは、著者自身も本著内で行く末を憂えてはおりますけど、本言語が教条主義的になってきており、まさに多神教を見下す一神教的様相を呈していたのが、私的には大きくマイナスで、故に反感を感じながら読んでしまいました。
 特に著者が(最初はともかく)あまりに感情的になり過ぎていて、本言語を批判する者は似非知識人を名乗るだけの存在で、本言語を肯定、又は賛美する者は素晴らしい・・・と、単純明快に断じてしまっているのがなんとも(自分が単純に断じてますが、実際はもうちょっと複雑)。
 もちろん、地球語(国際語)として、一つの言語に統一される事は、意思の疎通等の面では非常に重要であるとは思う。ただし、それが他の言語=粗野で美しくないとも取れる批判は、日本語の猥雑さが面白いと思っている者からすると、合理的ではあるが実務的で潔癖すぎるように感じてしまうのでした。
 ・・・もう少し冷静に状況を分析した内容であれば良かったのですが、ジョージ・オーウェルの『1984』を、(読んでいない為、その通りなのかもしれませんが)エスペラント語に批判的というだけで、ボロクソに作品自体を貶している文章で萎えた。
 元々、本言語を学んでおられる方や肯定的な方には読後感良い書となっているのだろうけど――批判的な方は当然ですが――それ程興味のなかった者としては、唸らざるをえない書でした。
 散々書いておりますが、本言語自体は、本著の入門知識だけでなんですが、簡潔で覚えやす(そう)に感じられるのには、興味が沸いております。
 目次は、「人間は言語を批判してはならない」「エスペラントはどんな言語か」「エスペラントの批判者・批判言語」「アジアのエスペラント」「ことばを人間の手に!」となっています。
 2007年6月20日第1刷発行 ISBN:9784004310778