『始皇帝』読了

塚本青史 講談社講談社文庫) 532ページ 790円+税
 秦の始皇帝の生涯を丁寧にその生まれから死までを描いています。先にネタバレすると、呂不韋の子供説を取っています。
 よって、取り立てて記すべくもないのだけれど、若くして名君と呼ばれた人物は、晩年になると暗君になるケースが多いですなあ。まあ、どの国も変わらないのですが、中国だけでも、秦の始皇帝、呉の孫権、唐の玄宗、清の乾隆帝・・・枚挙に暇がない。本書でも、前半は名君としての始皇帝、後半は不老不死に憧れる暴君として描かれています。前半も暴君と言えば暴君なんですがね。ただ、結末のオチは、あれじゃあ偽装も無理だろうと、突っ込まざるを得ませんでした。
 それと、始皇帝は、もちろんその能力と運もあったのだろうけれど、生国が興隆の最中であった”秦”でなかったならば、ここまで成功はしなかったんだろう、と。故に後記に記載されている「豊臣秀吉の双六人生よりも・・・」云々は、どうしても合点できない次第でした。
 何気、韓非に関して自業自得だった面を描いて、あまり良く扱われていないのも珍しい気がしました・・・鄭門さんの『始皇』の影響ですけどね。逆に蔚繚の存在は、本宮ひろ志さんの『龍王』で冒頭始皇帝から「煮殺せ」と言われているイメージしかなかったから、新鮮でした。
 この書籍は2006年8月に毎日新聞社より刊行されたものの文庫化です。
 2009年8月12日第1刷発行 ISBN:9784062764414