『虐げられた人々』読了

ドストエフスキー 【訳】小笠原豊樹 新潮社(新潮文庫) 561ページ 600円
 再読。
 私的ドストエフスキー作品の中で一番好きな作品。ドストエフスキー本人を連想させる主人公を語り手として、一組のカップルの誕生から破滅するまでの過程を、訴訟問題やそれぞれの家族との葛藤などのエゴのぶつかり合いを描く作品・・・なはずでしたが、中途より登場する貧困によって虐げられる少女と主人公の交流に多く筆が割かれるようになって、むしろこちらが主体になっているイメージがするんですよねえ。
 思想的な箇所や、堅苦しいところも少なく、とても読み易い大衆文学的な作品となっています。
 『貧しき人々』を読んでいる事が前提となっているので、そちらを読んでおくと更に作品の背景を理解しやすいかと思われます。
昭和48年10月30日発行 平成元年6月15日20刷 ISBN:4102010203