『水滸伝』(17巻、18巻、19巻+読本)読了

 北方謙三 集英社集英社文庫) 397+397+395+419ページ 各630円+税
 本編の準主役級の人物となっていた楊志の養子にして、秦明も親代わり、林冲、王進に鍛えられた楊令主役の『楊令伝』へと続く、な消化不良気味な終わり方でした。
 そんな前情報を仕入れずに、読み進めていたので、これって終わらないのではないか? 童貫倒せないのか、むしろ梁山泊負けるのか、とある意味ハラハラドキドキしながら読み進める事ができました。まあ、ぶっちゃけ、水滸伝としてではなく、水滸伝のキャラが登場する作品ってだけでしたがね。
 ちなみに、歴史小説のif小説には、”リアル”でなくなるものと、”リアル”であり続けるものの二種類があります。どちらを好むかは、人それぞれですが、自分はどちらかと言えば”リアル”であり続ける方を好む。よって前者の例として『反三国志』は嫌い。あまりの蜀贔屓展開に途中で読むのを止めようと思った程。まあ、『夢幻の如く』等の漫画だと許容できてしまうんですがね。
 でもって、本作品は、”リアル”であり続けてはいたものの、そもそも『水滸伝』が、妖術あったりの現実としての”リアル”では無い。水滸伝を”リアル”でやると”リアル”でなくなる不思議を本作品は見事に描ききったと思おう。”リアル”って一体なんだろう、と自問したくはなりますけどね。
 読本は・・・ほとんどが各巻の巻末にあった著者マンセーな文章を、新たに集めたものは置いといて、手紙のやりとりや各人物の設定などは興味深く読むことができました。
 この書籍は2005年4月、2005年7月、2005年10月に刊行されたものの文庫化です。読本は、加筆修正と大幅な追加が行われています。
 で、続巻となる『楊令伝』は、文庫化待ち・・・先は長そうだ。
〈十七〉「朱雀の章」:2008年2月25日第1刷 ISBN:9784087462616
〈十八〉「乾坤の章」:2008年3月25日第1刷 ISBN:9784087462722
〈十九〉「旌旗の章」:2008年4月25日第1刷 ISBN:9784087462821
〈読本〉「替天行道」:2008年4月25日第1刷 ISBN:9784087462838